体験談 Vol. 9

体験談 Vol. 9

私は2007年(25歳のとき)に脳腫瘍と診断されました。当時、入社2年目で実家から通勤していたのですが、朝、家を出る際に少し頭痛を感じたものの、現場作業もありいつも通り出勤しました。就業中は痛みも無く忘れていたのですが、帰宅後に再度頭痛を覚え、念のため市民病院の夜間救急にてCT検査をしてもらったところ、右脳に4cm程の白い影が見られ、当直医から脳腫瘍もしくは脳梗塞の可能性があると言われました。私自身、入院は元より、それまで一度も病気らしい病気をしたことが無かったので、脳腫瘍や脳梗塞と言われてもピンと来ず、大したことはないだろうと思っていましたが、隣にいた父親は、顔には出さないものの、たいそうショックを受けていたことを覚えています。

その後、医師から、正確な診断・治療を行うためにもバイオプシー検査を受けるよう勧められ、市民病院で受検し、大学病院での病理検査の結果、星細胞腫グレードⅡと診断され、私の脳腫瘍との共存・闘病人生が始まりました。

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私は理系人間なこともあり、どんなことでも自分自身で調べ、理解納得しないと気が済まないタイプなので、まず脳腫瘍の医療本を2冊購入し、徹底的に病気のことや治療法を調べ、わからなかったり気になったことはマーカーを引き、診察時に主治医に納得するまで聞くようにしました。勿論、5年生存率等、知りたくない情報もありましたが、それでも主治医に言われるがままに治療を受けるのではなく、私自身が主治医の治療方針に疑義なく理解納得しながら歩めたことは病気と正面から向き合うことが出来たとともに主治医との信頼関係も築け、非常に良かったと思います。そのようなこともあり、国立がんセンターはじめ全国の病院にセカンドオピニオンを受けに行きましたが、治療方針に大差無かったこともありますが、手術実績も然ることながら、最後の決め手は私の些細な質問にも一つひとつ丁寧に答えていただき、私の性格はじめ仕事や将来のことも一番理解していただいている主治医に執刀をお願いすることにしました。

 このような経緯もあり、開頭手術は14時間半に及ぶ大手術となりましたが、当日、手術台に上っても意外と不安や緊張も無く、無事終えることが出来ました。その後、放射線治療やサイバーナイフ治療を経て今に至ります。

 気づけば、脳腫瘍と診断されて十余年、落ち込んだりマイナスの面もあった一方で、人生のプラスになる面があったことも事実です。

 脳腫瘍と診断された際や余命宣告を受けた時は私自身も然ることながら、それ以上に両親はじめ家族にとって非常に辛い出来事だったと思います。

それでも、家族の誰一人、私の前で涙を見せることも無く、絶対治るから弱気にならずに諦めるなと気丈に振舞ってくれました。主治医をはじめとした医療従事者も勿論ですが、逆境の際の家族の存在や支えは計り知れない力があり、そのお陰で乗り越えることが出来たと思います。

また、放射線治療や開頭手術で1カ月半程入院した際には、私が仕事のことで気にならないようにと上司が入院期間中、一日たりとも欠かさず、職場の出来事を連絡してくれたとともに、私を勇気づけようと「絶対戻らない過去を後悔したり、何が起こるかわからない未来を心配するより、今この瞬間を大切に生きる」という禅の言葉を贈ってくれました。私自身、この言葉にとても支えられ、非常に有り難かったとともに、今も手帳に記し大切にしています。

このように、私自身が家族・主治医・医療従事者、友人・職場の上司・同僚はじめ「いま」「ここ」にある「あたりまえ」のことにどれほど自分が支えられているか、あるいは、癒されたり、励まされたり、勇気づけられたりしているかを脳腫瘍との共存・闘病を通じて気付くことが出来、常に感謝する気持ちと生かされていることを忘れず一日一日大切に生きていこうと思っています。

 加えて、脳腫瘍を通じて、主治医や医療従事者、また同じ病を経験し闘っているJBTAの方々に巡り逢えたことも大変有難く、嬉しく思いますし、何より脳腫瘍である私を受け入れ、いつも隣で支えてくれている妻には日頃言葉に出せていないものの感謝しています。

現在は半年に一回程度、MRI検査による経過観察をしています。毎回、MRI検査の結果には不安を抱きつつも、引き続き、脳腫瘍と上手く付き合いながら生きていけたらと思っています。

長文拝読いただきありがとうございます。

私の体験談が少しでも患者・家族みなさんの生きる勇気や希望に繋がれば嬉しく思います。

津曲祐司、患者本人)

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